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「日米開戦へのスパイ[東條英機とゾルゲ事件]」を読んで

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    日米開戦へのスパイ[東條英機とゾルゲ事件] 孫崎享 祥伝社

    本書はゾルゲ事件についての新たな仮説について論じたものである。

     

    ゾルゲ事件とは太平洋戦争開戦前夜の1941年にドイツ人ジャーナリスト、リヒャル

    ト・ゾルゲが日本の機密情報をソビエトに流した罪でゾルゲをはじめ多くの人が逮

    捕された事件である。判決の結果として19名有罪、2名死刑、ゾルゲと尾崎秀実、

    5名獄死、1名、服役中危篤から仮釈放後に死亡という結末となった。

     

    ゾルゲは当時の在日ドイツ大使の私的な顧問とも言える立場と、有人である尾崎をは

    じめとする日本政治中枢の情報網を使い、機密情報を収集しソビエトに送っていたと

    されている。

     

    従来のゾルゲ事件の評価としては、日本の軍事計画、シベリアを攻めるのではなく、

    南方の東南アジアに侵攻するという計画をソビエトに流したということは、大きくソ

    連を利することとなり、日本の国益を損なったものであるとされている。その情報を

    流したゾルゲスパイ団のソ連に対する功績は大きく、日本がそれを罰したのは当然だ

    というものだ。

     

    筆者の主張はゾルゲ事件は当時の総理大臣であった近衛文麿を辞任させるために行わ

    れたもので、ゾルゲが流した情報はソビエトの軍事作戦上、さほど有効ではなかった

    というものだ。

     

    当時は日米戦争前夜であった。日本の政権内には対米譲歩派の近衛首相と対米強硬派

    の東條英機(当時、陸相)が対立していた。東條側としては日米開戦をやむを得ない

    と考えている。乾坤一擲の開戦を行うためには、近衛首相は邪魔な存在であった。

     

    ゾルゲに先立って尾崎秀実が逮捕される。尾崎は近衛首相のブレーンともされ、近衛

    に近い人間であった。これによりスパイとつながりがあった疑惑で近衛首相の政権続

    投は不可能になり、近衛は10月16日には辞職してしまう。

     

    つまりゾルゲ事件とは近衛内閣倒閣のために対米強硬派によって行われたオプション

    であるというのが筆者の見立てである。実際には大して役に立たなかったゾルゲのス

    パイ行為を大きなものに宣伝した。

     

    戦後も冷戦構造の中、共産圏の脅威をあおるために自由主義諸国はゾルゲ事件を殊

    更、大きなものとして取り上げ、反対に共産圏諸国は祖国の英雄としてゾルゲを持ち

    上げた。

     

    実際にゾルゲは日本がシベリアを攻める北進作戦から南方の資源確保のために南進作

    戦への転換をするという情報をそれほど、はっきりしたかたちでソビエトに伝えてい

    ない。また、それを受け取ったソビエトも、その情報を重要なものとして扱っていな

    い。

     

    ソビエトがシベリアから対ドイツのヨーロッパ戦線に部隊を移動するのはゲオルギー

    ・ジューコフ将軍の進言による。ゾルゲ情報より以前に移動が開始されており、モス

    クワ防衛のため、シベリアの戦力の移動は致し方ないものとされていた。

     

    ゾルゲはソビエトに信用されていなかった。ゾルゲはナチスに反対する意図でソビエ

    トのスパイとなっている。「誰が為に鐘は鳴る」でスペイン内戦でファシストと戦う

    主人公のようなものでガチガチのコミュニストではなかったのだろう。それは共に逮

    捕され処刑された尾崎も同じである。

     

    ゾルゲはソビエトのスパイとなるに当たって、日本側から得た情報はドイツ側に流す

    ことも許可されていた。つまりドイツにとっては日本の情報を探るスパイだと思って

    いた彼が二重スパイとしてソビエトに情報を流していたということになる。

     

    ところがソビエトはゾルゲの情報を信用せず、実はドイツの意図でかく乱情報を流す

    三重スパイとして彼の活動を疑っている。ソビエトではスターリンの大量粛清によっ

    てゾルゲの仲間も粛清されている。ゾルゲの家族はソビエトにいるのだが、帰国すれ

    ば命が危いこともゾルゲは理解している。

     

    本書から浮かんでくるゾルゲ像は共産主義に殉じたスパイではない。ファシストに反

    抗するため共産主義に加担するも、そこからも疑われ、ドイツにもソビエトにも日本

    にも居場所のない悲惨な人物、それがゾルゲである。

     

    実際にゾルゲが使用した情報収集は犯罪的なものではない、政権内部に通じた人との

    通常の意見交換によって集めた情報しか彼は持っていない。外交官、ジャーナリスト

    とスパイを分けるものは何なのであろうか。両者はそれほど深い河の両岸にいるもの

    ではない。

     

    スパイは許されない行為だということは容易いが、その行為が外交官やジャーナリス

    トと明確な違いを持つものではない。ジャーナリストは取材をし、その情報を伝え

    る。それが国家機密だと政治が判断したらどうなるか。外交官は目に余るスパイ行為

    が発覚した場合は「ペルソナ・ノン・グラータ」として、その国から退去を命じられ

    る。スパイ行為は軽微なものならば許容されるが、その許容度は、時の政権が決定す

    ることであろう。スパイが絶対悪などとは簡単には言えない。

     

    この認識は昨今の米中の領事館閉鎖事件を考えるのに有効である。米国は実際のスパ

    イ行為の有無や程度によってではなく政治的な判断としてヒューストンの中国領事館

    を閉鎖している。なぜ、ニューヨークやワシントンではなく田舎のヒューストンなの

    か。スパイ行為の有無とは別に本件は政治的案件なのである。

     

    対する中国もそのスパイゲームのルールを理解している。閉鎖した領事館は北京や上

    海ではなく成都である。やりすぎない的確な制裁を用意している。この範囲でやり合

    っている限りは安心できる。米中新冷戦は米ソ冷戦と同じくコントロール下にあるよ

    うだ。米中新冷戦はトランプがやっている政治のプロレスなのだろう。

     

    本書に記されたゾルゲや尾崎の運命は悲惨である。それはファシストと戦うために致

    し方なくソビエトに味方した者達の姿である。本書には尾崎が家族に残した遺書が掲

    載されている。感動的な文章なので一読していただきたい。


    それは戦後の自由主義者の多くが納得するであろうものだ。彼らが自らの信念に生き

    るために他にどんな道があったのであろう。「自由か死か」の答えが彼らの末路だと

    したら、それは余りにも悲しい。

     

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